
第5回 うまくいけば「良し」。いかなければ「しかたない」。すべてはなるようにしかならない(中編)
絵を描き始めて1年経ったとき、今度は「ガク、ミュージアム」って言うんだよ。これは「自分の絵を展示しろ」ということかと頭を悩ませた結果、世田谷美術館に電話してみることにした。これまたラッキーなことに、彼の誕生日前後のゴールデンウィーク1週間が、ドタキャンで空いたっていうじゃない。これはもう「やるしかない」よ、と(笑)。
その展覧会には60枚の絵を展示したんだ。最初はがっちゃんの祖父母か、身内の誰かがお祝いに絵を買ってくれたらうれしいなくらいの気持ちだったの。ところが最初に来たお客さんがいきなり絵を買ってくれたからそりゃびっくりしたよ。結局一週間の間に合計150万円の絵が売れてみんなびっくり。ちゃんと高かった画材分は回収できたので、社長としてはホっとした(笑)。
「やばい。これは反響がある。本腰を入れよう」と思っていると、本人もどんどんその気になってね、半年後には「ガク、ニューヨーク」だって。これはもう未知のチャレンジだけど、可能性にかけてやるしかないよね。それならとブルックリンのギャラリーに目星を付けた。とはいえ、僕にも会社にもお金はないから、目標150万円でクラウンドファンディングをしたら、7枚の原画が売れて、215万円も集まっちゃった。
しかもコロナぎりぎりのタイミングでのNY展示会。そのときの成果がこれまたすごくて、バッグで有名なレスポートサックからコラボ商品を作りたいって申し出があったこと。今、レスポートサックの本社にはがっちゃんの絵が飾ってあって、近い将来コラボ商品を出すことを検討してくれている。
子育てにおいて、どうやってここまできたのかを考えてみると、僕が自分の子どもに何も期待していなかったというのも一役かったかな。人は自分の希望通りにいかないから落胆するけど、自分にはもともとそういう期待値がなかった。だって他人の人生なのに勝手に期待するっておこがましいでしょ?
こっちはシンプルに考えていて、うまくいけば「良かったね」だし、いかなければ「しかたない」。ひと言でいえば、なるようにしかならないというのが僕の心情。押しても引いても無理なものは動かないし、動くときは動く。親が無理やし動かしたところで、家を出れば本来の自分に戻るでしょ? いつも思うんだけど、パチンコに朝から毎日並んでいる人たち(悪いとはいってないよ)。子供の時は親が厳しく勉強しろといっても、大きくなったら親の影響力はなくなる。だから親はきっかけを与えるだけで、それ以上のことはできないと思っている。