第2回【療育の前にいいたいことがある!】

第2回【療育の前にいいたいことがある!】

第2回 好きは強い! 親は、自分の子どもは何が好きなのかを見極めてあげる

最近気になっているのは、おかあさんたちのSNSのアイコン。子どもの写真をプロフィール画像にしているおかあさんがけっこういるでしょ。驚くことに、メールアドレスにも子どもの名前を使っている。

 

わかる? これって子どもと親の人格が同一化されているということ。「できの悪い子ども=できの悪い私」という変な自己肯定感につながるから危険。うちの教室の保護者には、「プロフィール写真から子どもを外せ!」「メアドは自分の名前を付けろ」と言っている。

 

とにもかくにも、自分から子どもの人格を切り離せ。そうしないと共依存になっちゃう。ドライな言い方をすると、自分の子どもであれしょせんは他人。子どもには子どもの運命っていうものがあるから、その子に起きることに気をもんでも意味がないということ。

親は自分の影響力を過信しすぎているんだよ。自分が子どもをなんとかできると考えている。でも親にそんな影響力はない。その子次第なんだよ。親が子どもにしてあげられることなんてものすごく限られていると思っていたほうがいい。子どもにサバイバル能力があるかどうかが大切なんだ。その子が自分の能力で生活していく。親に言われたからではなくて、本人がどこまで自分の能力を追求できたかが重要。

 

だから「好き」には誰にも勝てないの。例えば、エンジニアでもミュージシャンでもその仕事が好きな人はやっぱり成功するからね。漫画家とかミュージシャンなんて英才教育の真逆だよね。親から「おまえにそんな才能はない!」といわれながら逆境の中で才能を開花させる。だから英才教育なんて意味がない。すると親の仕事は、自分の子どもは何が好きなのかを見極めてあげることが大切。

うちの娘を例にあげて話すと、彼女は普通の受験はまったく向いていない。成績も到底自慢できるようなものでなく。でもアメリカで育ったから英語は得意。図工も好き。だから、「その2科目だけは成績を落とすな。100点満点をとれ。他の科目は落第すれすれの65点でいい。それさえ守れば、成績に関して怒ることは一切しない」と伝えたの。

彼女が中1のとき、お年玉とかかきあつめて4万円を握りしめて俺のところに来て、「絵を描きたいからパソコンが欲しい」と言った。娘の覚悟がわかったので、2倍の金額を上乗せして、中古のiMacと、タブレット、Adobeを買って、絵を描ける環境を整えて、こう言ったんだ。「勉強のことは何も言わないけど、このパソコンで作った成果物は定期的に見せること。成果物なかったら激詰めされるよー!」

 

そうしたら、youtubeでアドビの使い方を学んで、フィルターやレイヤーを覚えて、絵を描くようになった。ご褒美として、中2になったとき知り合いのゲーム会社の社長に頼み込んで、夏休みにインターンをさせてもらった。社会人に触れることが重要だし、先方も同娘を気に入ったみたいで、「毎年インターンに来ていいよ」と言ってくれた。

 

今はインターナショナルハイスクールに通っているけど、授業の一環としてインターンを続けているよ。「卒業したらいつでも雇ってあげるよ」と社長も言ってくれている。娘が将来どうしたいかはわからないけど、少なくともうちの娘が受験したりOLになったりする姿なんて、全然想像できなかった。だからこそ、本人が興味をもっている分野で勝負させるしかないって思ったの。

日本人の親は、「集団行動」という言葉に弱い。「子どもの個性を大切にしたい」と言いながら、学校はその個性を殺すようなこと強要するし、親もそれを求めてしまう。「まんべんなく」そして「振り切る」ことをしないのも日本人の特徴。本当は得意なことがあったら、一点集中でそこに振り切ればいいんだよ。でも多くの親は、子どもが得意じゃないことを一生懸命練習させたり、勉強させたりする。

 

秀でている能力は無視して、できないことを平均値にもっていこうとして苦労する(大抵、そうならないけど)。「まんべんなく」を求める日本の教育は、今の時代においてすでに失敗なのに。グローバル化によって産業構造が変わってきているので、みんなが中流家庭という昭和の価値観はもう通用しないよ。

 

おかあさんたち全般にいえることだけど、自分の夫や子どもの仕事となると、自分の子どもときの、つまり昭和の自分の父親の環境を再現したがる傾向がある。終身雇用という昭和のモデルを自分の夫や子どもに期待している。すでに自分の夫の置かれている環境が崩れ始めているのに、自分の子どもに期待するのはどうしてなんだろう? 今の市場がどうなっているか知らないのに、子どもの職業を指南するなんて、とってもリスキーだと思うわけ。

 

だからおかあさんに必要なのは、いつも同じメンバーでママ友会をするのではなくて、新たな人脈を広げていき、自分が相談できる相手を増やすこと。例えば、子どもがスポーツに興味があるなら、スポーツ選手とつながりがある人が知り合いにいたらどう? 強いじゃない?

おかあさん自身の社会的接点が狭すぎるのに、子どもに大きなビジョンをもたせようとするから、当然無理も出るよね。これを読んで怒るかもしれないけど、ファミレスで子どものことをとやかく言っているおかあさんに限って思うわけ。当人がせっかく大学を出たのに、ここでお茶を飲んでいるだけ? それなのに子どもには成果を求める。要は当人がヒマだからあれこれ考えちゃう。

 

家事はルーチンで、意識の時間があり過ぎるから、頭の中で常に子どものことを反芻してしまう。そうしている間にいつのまにか、小さなことがでっかい問題になっていっちゃうんだよ。保護者の話を客観的に聞いていると、「そこは気にしなくていいんじゃない」っていう部分をすごく気にしているように思う。

 

おかあさんにはアドバイスしているのは、「紙に全部書き出す」こと。例えば、何に関して悩んでいるのか。具体的に何を悩んでいるかを全て書きだしたら、優先順位を付けて番号を振りなさい。そうすることで、問題を課題に変えられるようになる。問題はだれも取り組めないけど、課題は取り組めるから。だから「漠然と悩まないで、課題を明確にしなさい」という話を折に触れてする。

 

おかあさんがやりがちなのは、感情的にワーっと話して、「夫がわかってくれないっ」と怒るんだけど。そのモードで向かってこられたら、夫以外のだれもだってわかってくれないよ。面談中にガーって話すおかあさんには、「ご主人はなんていうんですか?」って聞くと、たいてい「面倒くさがって聞いてくれません」っていう。よそのダンナが聞いてめんどうな話なんだから、それを聞かされる俺はもっとめんどくさいのです(笑)。

 

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