
第2回 好きは強い! 親は、自分の子どもは何が好きなのかを見極めてあげる(中編)
うちの娘を例にあげて話すと、彼女は普通の受験はまったく向いていない。成績も到底自慢できるようなものでなく。でもアメリカで育ったから英語は得意。図工も好き。だから、「その2科目だけは成績を落とすな。100点満点をとれ。他の科目は落第すれすれの65点でいい。それさえ守れば、成績に関して怒ることは一切しない」と伝えたの。
彼女が中1のとき、お年玉とかかきあつめて4万円を握りしめて俺のところに来て、「絵を描きたいからパソコンが欲しい」と言った。娘の覚悟がわかったので、2倍の金額を上乗せして、中古のiMacと、タブレット、Adobeを買って、絵を描ける環境を整えて、こう言ったんだ。「勉強のことは何も言わないけど、このパソコンで作った成果物は定期的に見せること。成果物なかったら激詰めされるよー!」
そうしたら、youtubeでアドビの使い方を学んで、フィルターやレイヤーを覚えて、絵を描くようになった。ご褒美として、中2になったとき知り合いのゲーム会社の社長に頼み込んで、夏休みにインターンをさせてもらった。社会人に触れることが重要だし、先方も同娘を気に入ったみたいで、「毎年インターンに来ていいよ」と言ってくれた。
今はインターナショナルハイスクールに通っているけど、授業の一環としてインターンを続けているよ。「卒業したらいつでも雇ってあげるよ」と社長も言ってくれている。娘が将来どうしたいかはわからないけど、少なくともうちの娘が受験したりOLになったりする姿なんて、全然想像できなかった。だからこそ、本人が興味をもっている分野で勝負させるしかないって思ったの。
日本人の親は、「集団行動」という言葉に弱い。「子どもの個性を大切にしたい」と言いながら、学校はその個性を殺すようなこと強要するし、親もそれを求めてしまう。「まんべんなく」そして「振り切る」ことをしないのも日本人の特徴。本当は得意なことがあったら、一点集中でそこに振り切ればいいんだよ。でも多くの親は、子どもが得意じゃないことを一生懸命練習させたり、勉強させたりする。
秀でている能力は無視して、できないことを平均値にもっていこうとして苦労する(大抵、そうならないけど)。「まんべんなく」を求める日本の教育は、今の時代においてすでに失敗なのに。グローバル化によって産業構造が変わってきているので、みんなが中流家庭という昭和の価値観はもう通用しないよ。