
第1回 あわてるな! 落ち着け!(前編)
2001年生まれの息子が自閉症と診断されたのは、3歳の乳幼児検診のとき。自閉症が何かを知らなかったから、単純に「何、それ?」から始まったんだよね。Webで調べると、「自閉症の子は座ってられない」って書いてある。「ふーん。自閉症は座ってられない病気なんだ」って感じ。確かに、当時、自閉症は病気という概念しかなかったから「どうしたら治るの?」。そういうノリでわがやの子育ては始まったんだ。
Webには、やたらロサンゼルスという単語が出てくる。「そっか、ロサンゼルスに引っ越せば、なにかの糸口が見えるかもしれない」って思ったんだよ。ぼくは父親の仕事の関係でアメリカに住んでいたこともあったから、ロスに住むことには全然抵抗なかったしね。
息子が大変かって聞かれたら、小さい頃から今に至るまでずっと大変。でも、大変と不幸は別の次元の話だと思っている。だって大変でも楽しいことはあるし、不幸ではないから。だから、おかあさんたちに言いたいのは、もし自分の子どもが発達障害だって診断されても、「あわてるな」「落ち着け」ってこと。
親が不安を抱えて衝動的、感情的に動いてしまうと、合理的ではない決断になりがちだからね。「うちの息子が大変だったか?」って聞かれれば、もちろん全部が大変だったよ。例えば、息子が小さい頃、積み木をひたすら積み上げるんだけど、当然、崩れることがある。崩れるともう大変。癇癪起こしていつまでもビイビイ泣いておさまらない。バギーに乗せれば、動いていないと泣く。だから、家族で外食なんて考えられなかった。車も同じで、赤信号で止まると泣く。散歩をするようになれば毎日2時間は歩かないと気が済まない。極度の偏食だから、食事が気に入らなければ窓から投げる。
とにかく扱いがめちゃくちゃ大変ではあった。でもそうしているうちに家族はそれに日常になっちゃうんだよ。大変は大変だけど、周りに比較対象がいないから、だんだん慣れて「そういうもんだ」って思えてくるわけ。逆にそういうもんだって受け入れられないと育児ノイローゼになってしまう。
だから、おかあさんたちには、「決めつけるな!」と言いたいね。「こうであるべき」「こうなってほしい」という思いがあると、発達障害の子は、当然「普通」からは逸脱しているわけだから、無理矢理おかあさんの思いに寄せようとして、当然、無理が出る。そうすると今度はおかあさん自身が落胆するから、子どもにまたストレスがかかる。悪循環だよ。だから「自分のもっている『普通』というイメージに近づけることを放棄しろ。既成概念は捨てろ!」と保護者には言いたい。