
うちではサルと呼ばれています!
がっちゃんは自閉症の中では珍しい性格でとても社交的です。
新しい人に関心がありすぐに寄ってきますが、普通の会話とはちょっと変っています。
動作はものすごくすばしっこく、イタズラに関しては計算が速いので「サル」というあだ名がついています。
がっちゃんがサルと呼ばれる理由は、服を着るのを嫌がっていたため、家では冬でも裸族だったからです。
家で自主的に服を着るようになったのは中学一年生になってからです。
運動神経はかなりいい方です。バランス感覚もかなりよく、細いレールの上とかにすぐによじ登ります。一人で走るのは好きですが、それは気が向けばです。自主的に公園の周りをずっとマラソンしています。しかしチームプレイのようなスポーツはルールが飲み込めないので苦手です。
言葉に関していうと、英語が母国語として育っていますが、英語と日本語の区別は理解しています。
自分のいいたいことは多くて五つほどの単語をつなげて文章にします。
普段は二つの言葉ぐらいで簡潔にいってきます。
特殊なコミュニケーション方法です!
よく人からコミュニケーションはできるのか?と聞かれますが、答えは一方通行であればです。
「これとってきて」というような簡単な指示には従ってくれますが、あくまでも彼の気が向いていればです。
人が話しかけるとなにやら反応しますが、あくまでも本人がいいたいことを一方的にいうと去っていきます。
でも見ていないようで人のことはよく観察しています。
一度会った人の名前と場所は忘れません。
とても明るい性格であると同時に空気を全く読まないマイウェイな行動をとります。
しかし実はかなり繊細な一面もあり、新しい場所にいくと少しナーバスになります。
特に新しい学校とかになると不安になります。
それでも慣れてくるとイタズラサルの顔が出てきます。
それと何もいわないので分からないのですが、人のことを細かいところまで見透かしているような行動をとる時があります。
これはいまだもって不思議です。
ルーチンの儀式は律儀に守る!
自閉症は応用が利かない性格なので、一つの行動を決めたらそれを毎日の儀式のようにルーチン化させます。
例えば朝出かける前に必ずテーブルをぐるぐる回る、学校から帰るときにズボンにおしっこをする。
これらの行動は一種のこだわりで、数ヶ月すると突然解消されますが、今度は別の形の儀式が出てきます。
がっちゃんの場合は一時期床の真ん中にウンチをする、雄たけびをあげながら太鼓のオモチャを叩く、などがありました。
最近のブームは鼻をほじりながらわざと家族に向かって大きなくしゃみをする、というものです。
毎回どこかで誰かの「がっちゃんやめて!」という声が響きます。
ルーチンといえば、5歳の頃に勝手に家を飛び出して近所の決まったコースを走り歩くというのがありました。
歩くスピードが速いのと歩く距離も結構遠いので追いかける大人もギブアップしたくなります。
知らない間に脱走した時は一人で道を小さい子が歩いているので、大抵それを見た人が警察を呼びます。
あれ、家にがっちゃんいないな…、と思うと大抵近所にパトカーが集まっていてがっちゃんがちょこんと立っていました。
このようなことが度々続いたので勝手に飛び出さないように、ドアを開けるのに必要な鍵ロックを家の内側につけたほどです。
その時は大変だけれど、後で思い返すとどれも笑えるエピソードばかりです。
知能指数は測定不能です!
高機能と呼ばれる自閉症の子であれば、中には普通の授業にもついていける子もいます。
がっちゃんに関してはバリバリの自閉症の特色が出ており、机に座ること自体が困難でした。
走り回って思い通りにいかないと癇癪を起こしていました。また一つ一つ別のことを結びつけるのも苦手でした。
ボキャブラリー(単語)のスペリングなどは暗記できますが、自分で文章をつくるのは苦手でした。数を数える概念もありませんでした。
しかし今では授業中に机に座って集中できるようになりました。
そして好きな本も声を出して読み、自分で絵本を創るようになりました。
自主的に算数ドリルを解くようになり足し算、引き算、掛け算もこなしています。
もちろん普通の健常児と比べればまだまだですが、がっちゃんにとっては大きな進歩です。
言葉や絵などの表現方法が増えることによって癇癪も減りました。
彼を見ていて思うのですが、彼の直感力とサバイバル力は見事なものです。
私は単純に、彼の思考回路は既存の知能テストでは測定できないと思っています。
多分どこか他の星の住民が、なぜか我が家に生まれてきたのだと思っています。
電子機器は得意です!
普通の勉強に関してはロジックが得意でないのすが、パソコンやアイパッドのような電子機器になると話は別です。
誰からも教えられることなく勝手に様々な機能を使いこなします。自閉症にとって英語は相性がいいと思っています。
パソコンの入力も際も漢字変換とかを気にしなくていいからです。
ある時、がっちゃんが毎日パソコンで画像編集を黙々やっていました。
念のため彼の名前がついているフォルダをバックアップしようとしました。
するとやたらとファイルが重たかったので不思議に思いフォルダをあけました。
すると彼が編集した画像に1000枚以上に全てファイル名がついており連番が入っていました。
そして数十個のフォルダにキレイにカテゴリ分けされているのを見た時は驚きました。
クリエイティブなことが大好き!
がっちゃんの強い直観力は彼のクリエイティブに出ています。
アートが好きで、家ではいつも好きな音楽をかけて絵を描いたり工作をしています。
我が入っていない素直な絵なので、赤ちゃんが描いたような絵柄です。
センスはかなりのものだと親バカの私は勝手に思っています。
それとハサミを使うのは荒っぽい切り方だけれど職人並に動作が速いです。
すぐに沢山の作品をつくりあげます。
がっちゃんは言葉で自分の感情を表現することが困難です。
それでよくフラストレーションが溜まります。そうするとモノを壁に向かって投げつけます。
一時期はピザを屋根に投げつけて家族が大変でした(笑)。
そんな彼にとって絵や工作などを通じて感情表現をするのは一種の癒しとなっています。
また自分で何かを創ったという達成感を感じるせいか、自尊心の向上にも役に立っているみたいです。
ウンチだそうです……爆笑
ウシだそうです……爆笑
我が家のヒーロー!!
自閉症は特殊な世界観を持っているため、一般的常識が求められる社会では苦労します。
しかし彼らなりの素晴らしい世界観と洞察力があります。
自閉症は人の感情を察するのが得意ではないといわれますが、彼らの内側には豊かな感情の感性があります。
自閉症を病気として片付けるのでなく、特殊な思考回路・感性を持った人種だと捉えることが大切だと思います。
今後もがっちゃんにしかない素晴らしい個性が最大限に活かされる環境をつくっていきたいね、と家族で話しています。
最後にひとつ、佐藤親族の中ではがっちゃんはヒーロー扱いです(笑)。
自閉症の子育ては大変なことも沢山ありますが、自閉症でない子供にも違った苦労はつきものです。
大変であることと不幸なこととは別の話です。不幸で辛いと思うかどうかは受け止め方の問題です。
私は今回の事業を通じて、自閉症だけでなく他の様々な障害をもった子の家族が、悲しみを喜びに変えていくお手伝いを出来ればと思います。
親の視点を変えることで閉塞感が漂う状況に壁を取り壊して、新しい風を入れることができます。
そして個性を持っている全ての人が「I am!」と明るく宣言できる世の中に一緒にしていきましょう!
全ての個性にハッピーを!
2015年1月